外貨建て取引をfreeeで記帳するやり方、の巻

外貨建て取引をfreeeで記帳するやり方、の巻

はじめに

個人として確定申告のための帳簿付けや処理にクラウド会計ソフトのfreeeを便利に使っています。

で、少額ながら海外企業から報酬をドルでいただく外貨建て取引が発生しているのですが、

「外貨建て取引の記帳の方法がわからんぞ。それに為替差損益てどうやって計算して処理したらいいのん?」

と、なりまして。その方法のメモです。

freeeのヘルプセンターで検索してみると、

外貨での取引は、発生時のレートで円貨に換算して記帳します。また、期末に残った外貨建て残高は期末レートで換算し直し、差額を為替差損益として計上します。

freeeヘルプセンター

ということです。さらにこれに付随していろいろと説明をしてくれています。

「ふむふむなるほど。。。さっぱりわからん。」

と、わからないことがいろいろ出てきたので一個ずつ調べて潰していきましたが、必要な情報が分散しているというか、一か所にまとまりすぎているというか、私のケースの処理に関わる説明がちょうど良くまとまっているのがない。

そのため処理しようとするたびにあっちこっち探すものですから、じゃあ外貨建て取引の私のケースをfreeeで記帳するやり方をまとめて備忘録として残しとこ。

と、いう話です。freeeユーザーであってもそうでなくても、もしかしてどなたかのお役に立つかもしれないし。

なお、本記事は2021年5月17日現在における個人的な備忘録です。もしご参考になさる方がいらっしゃいましたら、作成当時から仕様や規則が変わってしまったなどで有効でなくなっている事項があるかもしれませんので、そのあたりご了承いただけますようお願いします。また、必要に応じて税理士の方や税務署にご相談くださいませ。

前置きが長くなってしまいました。。。それでは「外貨建て取引をfreeeで記帳するやり方」を見ていきます。

今回記帳する取引内容の概略

本記事で記載している取引ケースというのは、

「海外事業者からの請負業務の売上金がPayoneerの口座に米ドルで入金され、その後Payoneerから日本の銀行口座へ円転した。報酬受領時に手数料が、円転時に手数料および為替差損益が発生した。」

というものです。具体的な時系列を交えて示すと下表の通りです。これらをfreeeで帳簿付けをしていきたいぞ、と。

発生日内容備考
4月30日4月分請負業務締め毎月末締めとしています
5月1日4月分の請求書発行4月30日付(前月末日付)
5月13日4月分報酬を外貨売掛金口座(Payoneer)に受領手数料発生
5月13日Payonnerから邦銀口座(freeeに登録済み)へ振替し円転手数料と為替差損益が発生

帳簿付け手順の概略

ちょっと長くなるのでまず帳簿付けの手順の概略を示します。概略は下表の通りです。

freeeが提供してくれている外貨建取引管理アプリというのを使うことでより簡単に処理できます。

初回は事前準備が必要です。

事前準備

事前準備1

内容外貨建て口座をfreeeへ登録
方法freeeで外貨売掛金口座(Payoneer)の登録
備考ドル建て口座のPayoneerを登録。freee上では円で残高を管理

事前準備2

内容freeeで為替差損益計上用の勘定科目を設定する
方法freeeで「為替差損」と「為替差益」の勘定科目を作成
備考私は「雑収入」と「雑損失」で対応することにしたのでここはスキップ

事前準備3

内容外貨建取引管理アプリの利用準備
方法freee外貨建取引管理アプリとの連携と設定
備考freeeが提供している外貨建取引管理アプリを使う

帳簿付け

ステップ1

日付5月1日
イベント4月分の請求書発行
金額342.61ドル
処理外貨建取引管理アプリで外貨取引の登録(4月30日付)
備考取引発生日当日(4月30日)の為替レート(外貨建取引管理アプリによって提示)を適用

ステップ2

日付5月13日
イベント4月分報酬を外貨売掛金口座(Payoneer)に受領
金額342.61ドル(手数料込)
処理freeeで決済処理および手数料を記帳
備考取引発生日の前月末日(4月30日)の為替レート(外貨建取引管理アプリによって提示)を適用

ステップ3

日付5月13日
イベント報酬の一部をPayonnerから邦銀口座(freeeに登録済み)へ振替し円転
金額400ドル(手数料込)
処理freeeで口座振替登録および手数料を記帳
備考取引発生日当日(5月13日)の為替レート(Payoneerによって提示)を適用

ステップ4

日付5月13日
イベント円転時に為替差損益が発生
処理freeeで為替差損益を記帳
備考平均レートと円転時のレートを使用して差額を計算し為替差損益として記帳

*平均レートの説明は後述します

いつの為替レートを使用するか

いつの為替レートを使用したらいいのかについてですが、

外貨建ての取引の売上金額や仕入金額の円換算は、為替予約がある場合を除き、原則として売上げや仕入れとして計上する日の電信売買相場の仲値によることとされています。

国税庁タックスアンサーNo.6325

です。

というわけで、

取引が発生した日(ここでは4月30日)とPayoneerに報酬を受け取った日(ここでは5月13日)とで為替レートは普通は変化していますので、原則に従って処理すると報酬入金時点で為替差損益が発生することになります。

そうするとfreee上で金額が合わなくなってくるので、為替差損益の処理もこの時点でやらないといけません。そして後日に円転したらその時にも為替差損益の処理をやることになります。

しかし、私のような個人の場合は両替時のみ為替差損益を認識すれば良いわけですから、為替差損益が実現していない「ドルのままでの報酬を受領して決済処理する」ときにも帳簿付けすることになるのは、なんか二度手間感がすごいです。

そこで、

2 不動産所得等の金額の計算においては、継続適用を条件として、当該外貨建取引の内容に応じてそれぞれ合理的と認められる次のような外国為替の売買相場(以下57の3-7までにおいて「為替相場」という。)も使用することができる。

(1) 取引日の属する月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の電信買相場若しくは電信売相場又はこれらの日における電信売買相場の仲値

(2) 取引日の属する月の前月又は前週の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買相場の仲値、電信買相場又は電信売相場の平均値

所得税法基本通達57の3-2

を適用して、上表のステップ2のPayoneerに報酬を受け取った日(ここでは5月13日)においては取引発生日の属する月の前月末日の為替レート(ここでは4月30日)を使用し、このルールを継続的に使用していくことにしました。

こうすることにより為替差損益を考慮するのは円転時だけで良くなりました(これで問題ないことを2021年5月7日に税理士さんに確認しました)。

それにしても、法律関係の文章をビシッと理解できている方を尊敬します。私は何回も読んだけど、たぶんまだ完全には理解できていない。。。(しかもすぐ忘れる)

それでは具体的な方法を見ていきます。

具体的な帳簿付け方法

事前準備

まずは事前準備からです。

事前準備1 外貨管理用口座を登録する

ここでは外貨管理用口座として、Payoneerの口座をfreeeに登録します。

freeeにおいて、「口座」の「現金・その他」から「資産の口座(小口現金・仮払金など)を登録する」

freee_gaikaurikakekouza02

から、外貨管理用口座として登録します。

ここでは口座名を「外貨売掛金口座(Payoneer)」としています。で、登録。

freee_gaikaurikakekouza03

なお、freee上では残高を円で管理することになります。

なので、あとあと出てくる為替の平均レートを算出することが簡単にもなります。

事前準備2 freeeで為替差損益計上用の勘定科目を設定する

freeeのヘルプセンターによれば

為替差損益を計上する際は、「雑収入」や「雑損失」等の勘定科目が用いられます。ただし、為替差損益の金額が多額になる場合、「設定」→「その他の設定」→「勘定科目」から「為替差損」、「為替差益」等の勘定を追加し、そちらを用いるようにします。税区分は対象外です。

※ 勘定科目のカテゴリーは、個人事業主の場合「収入金額」または「経費」となります。

「設定」→「勘定科目の設定」にて、「為替差損」(営業外費用)、「為替差益」(営業外収益)等の勘定科目を追加し、そちらを用いて取引を登録します。

freeeヘルプセンター

です。

私は多額ではないので、新たな勘定科目を作らずに「雑収入」と「雑損失」で処理することにしました。で、メモタグで為替差損または為替差益として入力して、区別できるようにしました。(なんか手間としては変わらん気がしますが。)

事前準備3 外貨建取引管理アプリの連携と設定をする

freeeの「取引」→「その他の機能」の「他のサービスとの連携」から、「freeeアプリストア」に移動します。

gaikadatetorihikiapp01

「freee公式アプリ」から「外貨建取引管理アプリ」を探してクリックします。

gaikadatetorihikiapp02

「アプリを利用する」で

gaikadatetorihikiapp03

さらに、「アプリを利用する」

gaikadatetorihikiapp04
(*事業所名は消しています)

「アプリ連携の開始」において「許可する」ののち、

gaikadatetorihikiapp05
(*事業所名は消しています)

該当する事業所を選択します。

gaikadatetorihikiapp06
(*事業所名は消しています)

外貨取引メニューの

「設定」の

「未決済取引の登録」において、

為替差損益用の勘定科目;売上高
金額の端数処理方法;切り捨て
利用する通貨;米ドル

で登録します。端数の処理方法はお好みです。決めたらその方法を使い続けます。

gaikadatetorihikiapp08

これで外貨建取引管理アプリとの連携と設定は完了です。

事前準備がこれで終わりました。

帳簿付け

ステップ1 外貨建て取引が発生したときの処理

外貨建取引管理アプリから外貨建て取引を登録します。

外貨建取引管理アプリの「外貨取引登録」から、

gaikadatetorihikiapp07

外貨建取引に関する情報を入力します。

gaikadatetorihikiapp09

ここで、各項目を説明すると、

項目詳細
収支→売上なので収入
発生日経過勘定が発生した日付を入力します。
→4月の売上なので2021年4月30日にしています。
期日項目名が「期日」となります。支払いがなされる予定日を入力します。
→私の場合入力時点で確定していないので空欄。
勘定科目→「売上高」としています。
税区分a税区分を選択します。
→「輸出売上」
レートの適用b「自動」;外部のレートAPIから発生日における為替レートを自動的に取得します。
「自分で入力」;レート欄が表示されるため為替レートを入力します。
→「自動」
通貨取引通貨を選択します。
→「米ドル」
金額外貨建取引の金額を入力します。
→4月分の売上高「342.61」米ドル
取引先

品目

部門

メモタグ
各種タグ情報を選択します。
※ 入力時に付与した各種タグは、経過勘定の振替仕訳にも全て反映されます。
→私は取引先以外は空欄にしてます。
備考取引に関するメモなどを任意で入力します。
→私は売上年月と売上の金額と為替レート、外貨建取引管理アプリを使用したということがわかるようにしています。
2021年04月分売上, USD 342.61 @ JPY 108.94(外貨建取引管理アプリ)

a 私がやっている請負業務はすべてインターネット上で完結しますが、その作業が日本国内で行われているので、内外判定は「国内取引」に該当します。かつ、国外(日本非居住)の事業者に役務を提供していて、その成果物が日本国内で使われないことから税区分は「免税」に該当します(2021年5月12日に国税局電話相談センターにて確認しました)。
この場合のfreeeで入力する税区分は「輸出売上」になります。これは、課税売上であるが「免税」で税率が 0%であるので、freeeでの税区分は「輸出売上」に該当するということです。(2021年5月13日にfreeeのサポートデスクに確認しました)。

b レートは「自動」にしておけばアプリがレートを取ってきて提示してくれるので、特にこだわりがなければ自動にしておけばいいと思います。

自動でない場合は原則として、利用している銀行が公表している、売上・仕入等を計上する日のTTM(仲値)レートを用います。なお、換算レート適用のルールは、合理的に説明ができるものであって、かつ継続して適用する必要があります。

freeeヘルプセンター

私は調べるのが面倒なので自動で。

と思ったら、本記事を作成している現在、不具合発生中で自動でレートが出てこない。。。なんでや。

しょうがないので今回は「自分で入力」で登録しました。為替レートは「自動」と同じソースを使用すべきと考えたので調べると、

為替レートは欧州中央銀行が毎営業日の日本時間午後11:00に発表する為替レート情報を自動的に取得しています。

freeeヘルプセンター

ということなので欧州中央銀行のホームページから2021年4月30日の為替レートを確認しました。でも対ユーロしかレートの提示がないので計算して米ドル/円を出します。

4月30日は、
EUR/USD = 1.2082,
EUR/JPY = 131.62 

でしたので、
USD/JPY = 108.94 
になります。

入力が終わったら「登録」します。そうすると、freeeの取引一覧に追加されます。

*2021年5月28日時点で上記のレートの自動提示の不具合は解消していました。

はい、無事に登録できました。

gaikadatetorihikiapp10

ステップ2 決済したときの処理

Payoneerに入金された日に決済取引が発生するということになります。

Payoneerにおいて、入金と手数料の確認をして、

freee_kessai00

ステップ1で使用した為替レート(4月30日の為替レート; 1ドル = 108.94円)で日本円に計算します。

項目金額円換算額
支払い金額342.61 USD37,323円
手数料3.00 USD326円
合計金額339.61 USD36,997円

なお、

円換算した手数料
= 支払い金額(円)-合計金額(円)

で算出しています。

次にfreeeで決済の記帳と手数料の記帳をします。

売上高を登録していた取引の「決済を登録」から、

freee_kessai01

入金元口座;
 外貨売掛金口座(Payoneer)
決済日;
 2021-05-13(入金があった日)
入金金額;
 36,997円(先ほど円換算した合計金額)

を入力して登録します。このとき、差額を支払い手数料として登録します。

freee_kessai02

これで、決済処理まで完了しました。

ステップ3 円転したときの帳簿付け

Payoneerから邦銀口座へ円転したタイミングで帳簿付けします。

今回の円転前のPayoneerの残高を確認してみると、

426.56 USDでした。これは口座に残っていた以前の報酬の一部と今回の報酬が混ざっている状態です。

freee_enten01

ここから、400ドルを出金し円転することにします。

今回の円転の内容は、

Payoneerの口座のうち400ドルを2021年5月13日に邦銀口座(ここではソニー銀行)に出金し円転処理した。
換算レートは1 USD=109.62円、手数料8.00ドルだった。
Payoneerにおける邦銀への送金額は42,971.04円で、円転したソニー銀行口座において42,971円が記帳されていた。

というものです。以下で数字を拾っていきます。

まず、Payoneerにおいて送金額や手数料、円転時の為替レートを確認します。

Payoneerにログインしたら「アクティビティ」→「取引照会」から該当の出金処理のファイルマークあたりをクリックして、

freee_enten03r

出てきた画面の「確認を受信」から、

freee_enten04

「Confirmation_of_Transfer・・・」のPDFファイルがダウンロードできますので、送金金額と円転時のレートと円転の手数料を確認します。

freee_enten05

引き出し額(Amount withdrawn);
 400.00 USD
円転の手数料(Fee);
 8.00 USD
円転時のレート(Exchange rate);
 1 USD = 109.62 JPY
送金金額(Amount sent);
 42,971.04 JPY

ですって。

で、ソニー銀行(freeeと連携済みです)への入金がされたら入金金額を確認すると、

実際の入金額は 42,971円でした。

なので、この金額を手数料を引いた後の送金金額とします。

円転に供したのは 
109.62(円/ドル) × 400(ドル) = 43,848円
です。

なので

手数料(8ドル相当) = 43,848円 – 42,971円 = 877円

ですね。

ではfreeeに記帳します。ソニー銀行はfreeeと連携済みなので、該当する「未処理の明細」を開いて、「口座振替・カード引き落とし」から、口座を選択し手数料を入力します。

freee_kawasesason01

続いて為替差損益を記帳します。

ステップ4 為替差損益の帳簿付け

円転の際に発生した為替差損益を計算し記帳します。

為替差損益 = (円転時為替レート × 円転ドル額) – (平均レート × 円転ドル額)

ということになります。

まず、

円転時為替レート × 円転ドル額

は、「ステップ4 円転したときの帳簿付け」 にて確認した、

43,848円です。(109.62 × 400 ドル)

次に、

平均レート × 円転ドル額 

は、

平均レート
= Payoneerの円換算残高(freee上)/ Payoneerの米ドル残高(Payoneer上)

ということになるので、

円転する直前のfreee上のPayoneerの円換算残高とPayoneer上のUSD残高をそれぞれ確認すると、

・Payoneerの円換算残高(freee上)
  = 46,380 円
・PayoneerのUSD残高(Payoneer上)
  = 426.56 USD

でした。
Payoneerの円換算残高(freee上):

freee_enten02

PayoneerのUSD残高(Payoneer上):

freee_enten01

Payoneerの口座のお金はすべてが報酬として受け取ってきたものなので、そのまま平均レートの計算に使います。

そうすると、

平均レート
= Payoneerの円換算残高(freee上)/ Payoneerの米ドル残高(Payoneer上)
= 46,380円/426.56USD
= 108.73円/USD

であることがわかりました。

したがって、

為替差損益
= (円転時為替レート × 円転ドル額) – (平均レート × 円転ドル額)
= (109.62 × 400) – (108.73 × 400)
= 43,848円 – 43,492円
= 356円

となりました。

先ほどの明細にある「手数料・受取利息等」を開きます。

今回は為替差益なので、「受取利息等を追加」から「雑収入」として処理します。(「税区分」は「対象外」)

(為替差損なら「手数料を追加」から「雑損失」として処理します。)

なお、メモタグで為替差益と分かるようにしています。

入力できたら「登録」で完了です。

freee_kawasesason02

以上です。お疲れ様でした。

なお、個人の場合は外貨建資産などの期末時の換算は必要ありません(法人と違ってその規定がない)ので、Payoneerの残額の期末時換算はせずにfreee上の円残高のままで良いです(これも税理士さんに確認とりました)。

おわりに

ややこしい外貨建て取引の処理ですが、やり方を整理すれば意外と簡単に帳簿付けできることがわかりました。

次からはこの記事を見返せば迷うことなく処理ができるようになると思います、たぶん。

確定申告も楽にできるようになったし、freeeを使い始めることを選択してよかったわい(他の会計ソフトは使ったことないから比べられないけど)。

おしまい。



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