グレープフルーツがCYP3A4をどうやって阻害するのか見てみる、の巻

グレープフルーツがCYP3A4をどうやって阻害するのか見てみる、の巻

はじめに

好きです、グレープフルーツ。この前グレープフルーツジュースをぐびぐび飲んでた時にふと、「そういや薬を飲んでる時にグレープフルーツ食べたり飲んだりしたら薬物相互作用が起こる場合があるんだよね」というのを思い出しまして。

これは、グレープフルーツに含まれているフラノクマリン類が、薬物代謝酵素シトクロムP450の一種であるCYP3A4を阻害してしまって、飲んだ薬によってはその代謝が十分になされない、と。このため飲んだ薬の血中濃度が上がりすぎてしまい、作用が増強されたり副作用が出たりすることがある、と。

はて。。。では、どういう相互作用をして阻害してるのん?そういや全然知らないわ。

と思ったので、分子レベル(原子レベルというべきか)で可視化してみることにしました。

という話です。

今回見てみるフラノクマリン類について

さて、グレープフルーツに含まれているフラノクマリン類の主なものとしては、

Bergamottinと6′,7′-dihydroxybergamottin(以下、DHB)があるのですと。Bergamottinの代謝物がDHBという関係だそうな。

bergamottin_and_DHB
Bergamottinと6′,7′-dihydroxybergamottin(DHB)
参考文献1 Figure1 より

これらがCYP3A4を阻害しているってことなのね。

このうち、DHBに関してはヒトCYP3A4との複合体のX線結晶構造解析データがありましたので、今回DHBのほうを見てみることにしました。ちなみにDHBのほうがbergamottinよりもCYP3A4への結合力が13倍くらい強いっていうデータなんですと(参考文献1)。

なお、BergamottinとDHBとでは結合の仕方が異なっている可能性があることを心に留めておく必要があります。

では見てみましょう。

ヒトCYP3A4とDHBの結合の様子を見てみる

ヒトCYP3A4とDHBとの複合体のX線結晶構造解析データ(PDB id 6OOB)をPyMolにて描画してみます。

あらよっと。

結合している部分をみてみましょう。

CYP3A4-DHB_bindingsite

各分子に共通で、酸素原子は赤、窒素原子は青、硫黄原子は黄色にしています。

炭素原子は、hemeはマゼンタ、DHBは緑、CYP3A4のタンパク質本体は紫で色付けしています。

HemeとDHBはCYP3A4の中心、かなり奥まった空間に位置していますね。上の動画のSurface表示のときはがっつり埋もれすぎててよく見えませんので輪切りみたいに処理して露出させています。

Hemeの中心にある錆色のでっかい球は鉄原子です。鉄原子に水分子(赤い球)の酸素原子が配位(たぶん)していますね。このFe-Oの結合はCYP3A4の普段のFe-Oの結合よりも少し(〜7°)結合角がずれているとのこと。なお、水素原子は観測できていないので表示していません。あと、鉄原子以外の各原子の大きさは適当なので、位置情報だけ考慮してください。

DHBのソラレン(Psoralen)環のカルボニル基が119番目のセリン(Ser119)の側鎖と水素結合(黄の破線で表現)していて、7′-OHの部分が水分子を介して372番目のアルギニン(Arg372)と374番目のグルタミン酸(Glu374)の側鎖と相互作用しているのが見て取れます。あとはCYP3A4の疎水性の部分にDHBの疎水性部分が形よく収まっている、という感じでしょうか。

わたしてっきり配位結合か共有結合しているのかと思ってましたけど、そうではないんですね。じゃあ、どうやってMechanism-based inhibitionが引き起こされるのよ?わからんことがまた出てきてしまったではないか。。。むむう。誰かおせーて。

ところで、フラノクマリンてちょっと名前がかわいい。。。こんな画が頭に浮かんできてしょうがないです。。。

フラノのクマリン

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富良野くまりん。。。

この子がCYPを邪魔してるのねっていう。。。ああ、ごめんなさい。

おしまい

参考にした文献やサイト

  1. Sevrioukova IF. Structural Insights into the Interaction of Cytochrome P450 3A4 with Suicide Substrates: Mibefradil, Azamulin and 6′,7′-Dihydroxybergamottin. Int J Mol Sci. 2019 Aug 30;20(17):4245. doi: 10.3390/ijms20174245. PMID: 31480231; PMCID: PMC6747129.
  2. Rossi M, Aktar S, Davis M, Hefter Feuss E, Roman-Holba S, Wen K, Gahn C, Caruso F. The Grapefruit Effect: Interaction between Cytochrome P450 and Coumarin Food Components, Bergamottin, Fraxidin and Osthole. X-ray Crystal Structure and DFT Studies. Molecules. 2020 Jul 10;25(14):3158. doi: 10.3390/molecules25143158. PMID: 32664320; PMCID: PMC7397038.
  3. Protein Data Bank; https://www.rcsb.org/ , PDB ID; 6OOB(2021年6月10日アクセス)
  4. Wikipedia; https://ja.wikipedia.org/wiki/グレープフルーツジュース
  5. Wikipedia; https://en.wikipedia.org/wiki/Grapefruit%E2%80%93drug_interactions

実施環境

macOS Catalina バージョン10.15.7
Open-Source PyMolTM ver.2.4.0;モデルの表示、画像、動画ファイルの作成


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